四季折々に新潟を彩る豊かな花々を素材として積極的に活用し、まちづくりや観光を盛り上げようと、新潟日報社や県観光協会が世話人となって開催しているキャンペーン「にいがた花物語」の一環として、今年第三回の「新潟花人会議」が十一日、上越市高田公園内の小林古径邸で開かれた。公園内ではちょうど上越はすまつりが開催中。色鮮やかなピンクの花が揺れるお堀に囲まれた会場には、上越地域で花にかかわる活動に取り組む団体の関係者や一般市民ら約四十人が集まり、地域の交流人口の拡大に花の魅力をどう活用できるか意見を交わした。参加者を対象に、ハスの見学会も行われた。
<現場報告>
田中正人さん(上越はすまつり実行委員長)
小林健吉さん上越市安塚区総合事務所総務・地域振興グループ主任
涌井九八郎さん(津南町地域振興課長)
<はすまつり 田中さん>
首都圏でも誘客活動
<ヤナギバヒマワリ 小林さん>
住民と行政連携大切
<ヒマワリ畑 涌井さん>
農業の町景観でPR
会議では、上越観光コンベンション協会の竹田浩幸総務企画課長が、上越地域での花にかかわる取り組みが市民の楽しみから観光中心に変化しているという全体的な傾向を説明した後、上越市と津南町の三地域の代表が、現場報告としてそれぞれの活動の目的や地元の思いを紹介した。
現場報告では、上越はすまつり実行委員会の田中正人委員長が、二十八回を迎えたまつりの詳細を説明した。
「東洋一」と賞される高田公園のハスは、明治の初めに食用目的にレンコンを栽培したのが始まり。現在は十九ヘクタールの外堀のほとんどを埋め尽くし、七月下旬から八月中旬にかけてピンク色を中心とした「和蓮(われん)」が楽しめる。
まつりは昭和五十年代から市民の実行委員会を組織して実施してきた。今年も二十六日までの期間中、講演会や散策会、撮影会など多数の団体が参加してイベントを開催している。「最初は自然に親しみ、市民の触れ合いを図ることが目的だったが、最近は観光と結び付ける方向で取り組んでいる」と、田中さんもまつりが観光中心にシフトしていることを紹介。首都圏でのキャンペーンなどPRにも力を入れていると強調した。
市内安塚区からは同区総合事務所総務・地域振興グループの小林健吉主任が、ヤナギバヒマワリを使った花壇づくりについて、住民と行政の連携の工夫などを報告した。
同区の住民が花の植栽運動を始めたのは、安塚町当時の一九八五年。九〇年ごろ、区内で株分けしてもらったヤナギバヒマワリを一部で植えたところ好評で、次第に多くの集落に広がった。「黄色い花が日に当たると輝いて非常にきれい」と小林さん。ほかの植物とも組み合わせながら、県道・市道沿い計十七キロほどに植栽され、今秋には百二、三十万本ほどが開花する予定だという。
小林さんは「運動の広がりは行政と住民ボランティアの歯車が合ったことが大きい」と言う。行政は道路整備の際に沿道に花壇も整備、植栽と管理は住民が引き受けた。また、町が臨時職員を雇用、各地区の植栽の日程に合わせて花壇の耕運を事前に行い、作業を軽減した。「まちづくりとして出発し、点から線へ、最近ようやく面の形になってきた」と自信を深めている。
津南町からは、沖ノ原のヒマワリ畑について同町地域振興課の涌井九八郎課長が報告した。
沖ノ原は、標高四百三十メートルの河岸段丘の台地。スイートコーンやアスパラガスなど、いろいろな作物が栽培されている中央の四ヘクタールにヒマワリが植えられている。
「当初は地元の人たちが連作障害の回避や自分たちの楽しみでやってきた」というが、予想を超える反響に、四年目から事業主体を観光協会に移し、駐車場や見晴台の設置など観光客の受け入れ態勢を整えた。七月二十日過ぎからお盆まで楽しめるよう、種まきの時期も三回に分けている。
「津南は農業の町なので、農業景観を見たり、農産物を味わったりしてもらえることが大事」とヒマワリをきっかけに津南の魅力をアピールしたいと期待している。
【写真】田中正人さん
【写真】小林健吉さん
【写真】涌井九八郎さん
【写真】見渡す限りのヒマワリ畑。県内外から多くの行楽客が訪れる=10日、津南町
【写真】高田公園の西堀を埋めるハス。炎天下にもかかわらず、西堀橋から花を眺める人が絶えない=11日、上越市
【写真】黄色く輝くヤナギバヒマワリの群生=2006年10月、上越市安塚区
<意見交換>広域で見どころ発信 イメージ戦略も不可欠
現場報告に続いて、上越観光コンベンション協会の竹田浩幸さんと県観光協会の吉田雄一・旅行開発課長も加わり、花と連動したにぎわいづくりや観光商品の開発などについて意見交換が行われた。
花場をどう観光に結びつけていくかについて、田中正人さんがハスを食材として活用した「蓮(はす)の御膳(ごぜん)」の取り組みを紹介した。
地元の薬膳料理研究家からアドバイスを受け、市内のホテルや料亭が今年、それぞれ工夫してメニュー化した。お盆の時期にも重なり、予約は好調という。田中氏は「観光ツアーもただ見るだけではなく、食事をしてもらい地元にお金が落ちるシステムが必要だ」と提言した。
安塚区の小林健吉さんは「(ヤナギバヒマワリ植栽の)出発点がまちづくりやコミュニティー再生にあったので、観光地としてのPRは遅れている」と現状を説明。「上越市と合併した今後が勝負。ゆきだるま温泉と一体でPRしていきたい」と述べた。
津南町にはヒマワリの季節になると観光バスがかなり入ってくるが、涌井九八郎さんは「大人数で食事できる施設が町内にない」と課題を挙げた。お土産の開発にも取り組んでおり、ヒマワリの形をした人形やキーホルダー、オリジナル切手なども販売している。
滞在時間を延ばすため、近くの畑でスイートコーンを収穫し、その場で生で食べてもらう体験も行っていて「ヒマワリを見るよりよほどいい」との感想もあったという。
吉田さんはそれぞれの取り組みを評価した上で「観光客一人一人の意見を大切にして、口コミで宣伝してもらうと効果は大きい」と助言した。
複数の花場が連携し売り出す戦略について、竹田さんは「桜は高田公園が有名だが、安塚区や中郷区にも見どころがある。それらを一体でPRし、一カ所見て終わりということにならないようにしたい」と述べた。
花を核にした観光地として情報発信していく場合のイメージづくりも必要だ。小林さんは安塚区を「スローライフ」、涌井さんは津南町を「健康な町」とアピールした。
田中さんは「ハスは『幻想的』『朝』『健康』などのイメージに結びつく」としながら、「にぎやかな観桜会と異なり、ハスを祭りとしてどうPRするか難しい」と悩みを明かした。
最後に田中さんは「新潟国体が開催され、県内を舞台にした歴史小説『天地人』が原作のNHK大河ドラマが放送される二〇〇九年へ向け県全体としての盛り上がりが欠けている。上越市民の間には観光でもうけることに卑しさを感じるような風潮もあり、意識改革が必要だ」と訴えた。
【写真】地域の花を今後どのように素材として生かしていくか、熱心な意見が交わされた=11日、上越市小林古径邸
参加者が観賞会 ハスの歴史学ぶ
花人会議に先立ち、上越市高田公園で会議の参加者を対象に見ごろを迎えたハスの見学会が行われた。
高田公園のハスは夏、高田城跡の北堀、西堀、南堀にかけての周囲約四キロ、面積約十九ヘクタールを埋め尽くす。日本古来の和蓮が中心。ほとんどの花がピンク系だが、白色も交じる。
例年なら緑の大きな葉がじゅうたんのように広がり、その上に紅色のソフトボール大の花が散らばって見事なコントラストをみせる。しかし、今年は花がやや目立たない。
見学会で上越観光コンベンション協会の竹田浩幸総務企画課長は「今年は六、七月の気温が低かったため、花を付ける茎が伸びず、花の位置が低い」と説明した。
花の一部が葉の陰に隠れてしまっているためで、花の数は例年通りという。
竹田さんが公園のハスについて、明治初期の高田藩の経済的窮状を救うため、レンコンの大量栽培を目的に植えられた歴史などを説明した後、参加者は西堀橋付近からハスを観賞した。
毎年ハスを見に来るという同市中郷区二本木の東條良子さん(58)は「もともと食用に植えられたなど高田のハスの歴史が分かってよかったです」と笑顔で話していた。
【写真】花人会議の参加者を対象に行われた高田公園のハスの見学会=11日、上越市